中小建設業のM&A 「20.株式交換および株式移転の手続き」を追加しました

前回は、株式交換および株式移転について、その概略をお話ししましたが、今回は、これらの手続についてもう少し考えてみようと思います。

 

株式交換や株式移転の主要な手続は、合併や会社分割の手続と大きくは変わりません。株式交換や株式移転の場合も、合併や会社分割と同様、会社の経営や株主の利益に重大な影響があるからです。

 

株式交換の場合は株式交換契約を結び、株式移転の場合は株式移転計画を作り、それぞれ株主総会の特別決議による承認を受けなければなりません。

 

また、一定の場合には、債権者保護手続が必要になり、株主には株式買取請求権が認められます。さらに、要件を充たした場合には、簡易的な手続や略式の手続が可能になり株主総会決議を省略できる場合がある点も共通しています。

 

その一方で、違いもあります。大きな違いは債権者保護手続です。合併、会社分割では、債権者保護手続は原則として必要でした。債権者の担保となる会社財産に影響するためです。

 

しかし、株式交換および株式移転の場合は、基本的には債権者保護手続は必要ありません。株主が交替するだけなので、債権者にとってみれば債務者企業の財産の状況に変わりはないからです。

 

ただし、株式交換や株式移転でも、債権者保護手続が必要になることがあります。それは、債権者の利益に影響が及ぶような場合、たとえば、その債権者にとっての債務者が交替する、あるいは債務者企業の財産の状況が変わるようなケースです。

 

ここで、債権者保護手続が要求されるのはどんなときか、株式交換と株式移転についてそれぞれ具体的にみていくことにしましょう。

 

1.株式交換

(1)完全親会社となる会社が、完全子会社となる会社の新株予約権付社債(※)を引き継ぐ場合。
この場合、子会社となる会社の新株予約権付社債権者にとっては債務者の交替です。また、親会社となる会社の債権者からすれば会社財産の変動です。そのため両方の会社で債権者保護手続が必要になります。

 

(2)完全親会社となる会社の株式以外の財産を、完全子会社となる会社の株主に交付する場合。
この場合は、完全親会社となる会社では、資金が流出しますから債権者に対して債権者保護手続が必要です。

 

※新株予約権は、会社に対し権利行使することにより、予め決められた条件でその株式会社の株式を取得できる権利です。新株予約権付社債は、名前のとおりこの権利が付いた社債をいいます。

 

2.株式移転
株式移転でも、完全親会社となる新設会社が完全子会社となる会社の新株予約権付社債を引き継ぐ場合に、子会社となる会社で債権者保護手続が必要になります。株式移転の場合は、完全親会社となるのは新設する会社ですから、完全親会社の債権者保護手続はありません。

 

「建設業のM&A~法務」は今回が最後となります。
タイトルは「建設業の・・・」でしたが、建設業特有の法務というよりは、どの業種にもあてはまる内容を中心に書かせていただきました。長い間お付き合い下さってありがとうございました。

 

さて、「企業評価」「法務」と、約2年半に亘りお付き合いいただきましたこのメルマガですが、ここでいったんお休みを頂戴し、その後、また新たな気持ちで、「M&Aの会計」というテーマで読者の皆様にお会いしたいと思います。その時に、またお付き合いいただけるなら幸いです。

 

M&A・企業組織再編部門
公認会計士 原田裕子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/

 

前回までのレポートはこちらをご覧ください → http://ct.mgrp.jp/staff/