2007/07/12

9.マルチプル法とは

前回までのところでDCF法についてお話してきましたが、DCF法は誰にでも簡単にできる方法とはいえません。そこで、今回はDCF法に比べて簡単に株主価値を計算できるマルチプル法についてみていこうと思います。

マルチプル(multiple)法は、評価しようとする会社と類似した上場会社の財務数値(純利益、純資産など)と株価の比率(評価倍率)を使って株主価値(あるいは株価)を求める方法です。
株主価値は下記のように計算できます。

株主価値 = 評価会社の財務数値(純利益、純資産など)×類似会社の評価倍率

上の式の評価倍率をマルチプルといいます。マルチプル法が、倍率法とか乗数法などと呼ばれることがあるのはこのためです。

マルチプル法は、株式市場でつけられた株価を使うことからマーケット・アプローチと呼ばれています。その前提には「ある会社の株価と一定の財務数値の間に成り立つ関係は、その会社に似ている会社にも成り立つ」という考え方があります。マーケット・アプローチは実務で広く使われていますが、実際の株価を使うので客観性があってわかりやすく計算も簡単なことがその理由でしょう。

ここで、マルチプル法の代表的な評価倍率であるPERを例にとって具体的な計算をしてみましょう。
PERを式であらわすとPER=株価÷1株あたり税引後利益(EPS)となります。PERは、「株価が1株あたり税引後利益の何倍か」をしめすものです。

例えば、A社(上場会社)の株価が千円、EPSが50円だとすればPERは20倍です。いま、A社と事業内容のよく似ているB社(未公開会社)があるとしましょう。B社のEPSが500円ならば、B社の株価は、500円×20倍=一万円と計算できます。この計算をする場合には、普通、A社の株価は前日か当日の終値を使い、1株あたり利益は今期または来期の予想値を使います。現在の株価は、すでに将来の業績を織り込んでいると考えられるからです。
PER以外のよく知られる評価倍率としては、PBR、PCFRなどがありますが、株価の算定方法の考え方はPERと同様です。

 

また、M&Aのケースでよく利用されるその他の評価倍率としては、EV/EBITDA倍率があります。分子のEVは、株式時価総額+有利子負債額で計算される企業価値です。分母のEBITDAはキャッシュフローの一種ですが、前述のPCFRに使われるキャッシュフローが税引後利息支払後のものであるのに対し、EBITDAは税金と金利を差引く前のものです。
EV/EBITDA倍率は、M&Aの際に、買収後の借入の返済までも考慮にいれた買収に必要な金額が、EBITDAの何年分で賄えるかを表す指標として使われています。ただし、この指標を使って株主価値を求めるには、計算した企業価値から有利子負債額を差引かなければなりません。

 

今回は、マルチプル法の基本的な考え方についてお話しました。次回は、マルチプル法を実際に使う場合の留意点などについて考えてみようと思います。

 

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