対策案の検討について【中小製造業のQCサークル:第10回】

前回まで、「THE金型名人」が特性要因図を作成し、「立上り品質トラブルが起きている」要因を、なぜなぜと分析したことについてお話ししました。
今回は、この特性要因図を元にした対策案の検討について、お話したいと思います。

対策案の検討では、悪い現象を発生させた真の原因を取り除いて、二度と同じ減少が起こらないように、根本的な対策を打つ必要があります。
そのためには、サークルメンバー全員の知恵を絞り、対策のアイデアを出していきます。

特性要因図からどのように対策を導き出すかについては、いろいろな考え方があると思いますが、大きくは、各々の要因(小骨)に対して考えられる対策案を挙げていくやり方と、要因(小骨)の中から最も重要と思われる数項目に対して対策案を挙げるやり方の2つです。
Nさん達は、とりあえず全ての小骨に対して考えられる対策案を検討していきました。

議論の結果、製品や金型に表れる事象の要因を解決する策として、その当時はまだ当社では取り組んでいなかったCAE(Computer Aided Engineering)解析に行きつくのではないかとの意見になりました。
ここでのCAE解析とは、金型の製作に入る前に設計データを使って、強度解析や流動解析をするということです。

例えば、強度解析によって、強度が弱い部分が事前に分かるので、その部分の形状を変えることで、ヒビ・割れを防ぐ。
また、流動解析によって、材料が充填しにくい部分が事前に分かるので、その部分の製品肉厚を調整したり、金型のゲート(材料の投入口)位置を変えたりすることで、ヒケ・ソリを防ぐ、といった感じです。
更に、熱の解析により冷却しにくい部分が分かるので、冷却回路の検討ができるようになります。

以前にもお話しましたが、これらの問題はもともと金型自体の問題というよりも、むしろ製品設計での問題といえるかもしれませんが、金型製作メーカーとして最終製品に責任を持つという意味でも、初期段階でこれらのことを受注元に伝えられるかどうかが金型メーカーの強みになるとNさん達は考えていたのです。

少し専門的になってしまいましたが、次回も、もう少し対策案の検討についてお話したいと思います。

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この記事の執筆者

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

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