14.公告・催告、異議申出があった場合の手続

今回も前回にひき続き、会社分割の債権者保護手続についてみていきます。

 

「この会社分割に反対!」と会社に言える債権者は誰か。前回は、このテーマで考えてみました。これはとても重要です。「異議を言える債権者」がいる場合に、会社は、公告や催告といった手続が必要になるからです。

それでは、「異議を言える債権者が誰か」がわかったところで、今回は、債権者保護手続の内容を具体的に確認していくことにしましょう。(以下、「会社」は、特に断りがない限り「分割会社」と「承継会社」の両方を指すものとします。)

1.公告と催告

会社は、次のA~D(注1)について官報に公告し、かつ、把握している債権者(もちろん「異議を言える債権者」です)には個別に催告しなければなりません。(注2)

 

A.吸収分割をする旨
B.吸収分割の相手方の商号および住所
C.分割会社・承継会社の計算書類に関する事項
D.債権者が一定の期間内(注3)に異議を述べられる旨

 

(注1)吸収分割の場合ですが、新設分割でも基本部分は同じです。

 

(注2)決算公告の方法として定款に定めていれば、日刊新聞への公告(または電子公告)により個別の催告を省略できます。日刊新聞等に公告すれば、催告の手間が省けるし、一見催告もれの心配もなさそうですね。

しかし、その場合でも、不法行為によって生じた分割会社の債務の債権者に対しては催告を省略できません

(たとえば、それが、製造物責任を原因とする債務のように債権者がたくさんいる時には、催告は大変です)。

ですから、この方法でも100%安心というわけにはいかないようです。

 

(注3)異議申出期間は1ヶ月以上必要です。

2.異議の申し出があった場合

このとき、会社は、その債権者に弁済、あるいは相当の担保の提供等をしない限り会社分割の手続を進められません。

 

ですが、前回もお話ししたように、大口債権者に異議を申し出られたら普通は弁済できません。そのため、実際は、事前に大口債権者の同意をもらってから分割手続を進めるというのが一般的でしょう。ただし、会社分割をしてもその債権者が害されない場合は弁済等をする必要はありません。

今回、債権者保護手続と隠れた債務の関係についてもお話しする予定でした(M&Aではリスクとなるので)が、予想外に長くなってしまったので、勝手ながらこれは次回としたいと思います。

 

M&A・企業組織再編部門
公認会計士 原田裕子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/

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