第3回 事例企業A社の問題点について(その1)

皆様こんにちは。前回から、金属プレス加工メーカーのA社の事例を用いながら、中小製造業での「社内活性化プロセス」についてお話しています。

前回、A社は、難易度の高いプレス加工を得意としており、特殊なことにチャレンジするという社長の気概が、お客様から評価され、当社の競争力の源泉になっていることをお話ししました。もちろん、気概だけでなく、これまで社長が行ってきた設備投資(特に、ハイレベルの検査機器)やこれまでの技術の蓄積、そして社長についていこうと一生懸命な従業員の下支えがあるからこその評価です。

 

しかし、A社の内部では、色々な問題も山積みです。今回は、A社の問題点を中心にお話したいと思います。

 

ご支援がスタートした初期のある日のこと、社長と私どもとで、得意先別の今後の営業方針についてのお打合せをしていました。お打合せがスタートして少しすると、社長の携帯が「プルルー」と鳴り出します。

 

得意先F社の購買担当:「先日お願いした図面のコスト見積りですが、できたら早めに送ってくださいね。」

 

社長:「(しまった、忘れてた。)はい、すぐに送ります~。」⇒(問題1)

 

その約10分後、「プルルー」

 

T課長(試作):「すみません、Q社様の試作の件ですが、予想以上に時間がかかっており、明日の納期までに間に合いそうもありません。どうしたらよいでしょうか。」

 

社長:「うーん、何がネックになっているの?まあ、仕方がないから、少し遅れるって電話しておくよ。(この調子だと、今度の○▽部品は、外注に出すほうがよさそうだな)。」⇒(問題2)

 

実は、その後も電話が鳴り続けるのですが、それは次回にお話しさせていただくことにして、上の会話に表れている問題点を少しご説明したいと思います。

 

1つ目は、当社では日々の受注業務の担当者以外に、ルート営業を置いていないため、お客様からのちょっとした相談や見積り依頼のほとんどが社長に直接かかってきます。

 

ここでの問題点は2つあり、1つは社長が日常業務に時間を取られるということと、もう1つは、既存取引先を定期的に訪問していないために、取りこぼしている仕事が多くあるということです。

 

得意先も、難易度の高い部品についてはA社を頼って声をかけてくれますが、付随する周辺の難易度の低いものについては、同業他社に取られているのが実情で、営業効率が良いとは言えません。

 

2つ目の会話は、試作の担当者もお客様との直接のやり取りを行っておらず、社長を通じてのやり取りとなっていることに起因しています。

 

ここでの問題点については、また次回にお話していきたいと思います。

みどり合同経営 コンサルティング部門 副部長
シニアコンサルタント 澤田 兼一郎
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みどり合同経営 コンサルティング部門
中小企業診断士 犬飼あゆみ
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