第17回:<ステージ2>月次の実績を把握しており、かつ、それにもとづいた管理も行っている企業(8)

皆様、いかがお過ごしでしょうか?
今回は前々回、前回に引き続き「在庫(製品原価)の評価」の問題についてお話
させて頂きます。

前回は、「目標原価で管理すべきだ!」という考え方について、現場でのモチ
ベーションを高める要因となり、結果として「原価を下げる!」方向に働
くことになる、という内容のものでした。

しかし、今回は、「目標原価で管理すべきでない!(今はその時期ではな
い!)」 と考え方について、何が原因なのかを考えてみたいと思います。

目標を設定することにより、人のやる気を高め、目標に向かって努力をします。
しかし、目標が高すぎる場合には、頑張っても届く見込みがない目標であるため、
やる気をなくし、努力することを辞めてしまいます。つまり、「高すぎる目標
では、「目標原価で管理する」本来の意味が失われてしまうのです。

ただし、「今はその時期ではない!」という社長の言葉には、「高すぎる目標」と
は関係なく、もっと根本的に「目標原価で管理する」ことができない大きな理由
があるのです。それは、実際に現場で製造を行う従業員が「(実際の)原価」のこ
とを理解していないということです。もっと分かり易く言えば、製品を作るため
に材料や人や設備などが必要であり、それにどれらいのお金がかかっているかを
把握していないということです。

製品を作るために何が必要で、どこにお金がかかるか分からなければ、いざ目標
を設定されたとしても、自分が何をすればよいか「ピンと来ない!」のです。実
際の原価の中身を理解していないのですから、「ピンと来ない!」のは当たり前の
ことです。

社長が、「今はその時期ではない!」と言ったのは、このような理由からです。ま
ずは、現場で製造を行う従業員に「実際の原価の中身」を知ってもらわなければ、
「目標管理」どころの騒ぎではないということを意味しているのです。

最終的には「目標原価で管理すべきだ!」ということになるのですが、それには
段階があって、まず、現場で製造を行う従業員に「実際の原価の中身」を知って
もらったうえで、「高すぎない目標」を設定すべきだということになります。
萬屋博史(コンサルティング部長)
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yorozuya/

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