「時間・人」当たりの生産性が倍になったD社の取り組み(1)【今日から実践!基本からの生産管理・第3回】

前回は、生産性について考えてみました。
今回は、作業内容の見直しで生産性を上げた事例をご紹介します。

 

D社の概要

D社は関西の住宅建材メーカーで、パート従業員を合わせて100名規模の会社です。

製品は、すべて受注生産です。出荷は、受注(材料受入)当日が1割、翌日6割、翌々日2割、それ以降1割、と非常に短納期が求められています。
お客様の建築工事工程に合わせて納入しなければいけないからです。

工程は、材料切断→加工→接着→バリ取り→仕上げ→検査 の流れです。
切断加工から接着までは設備による作業が中心で、設備台数で生産能力が決まりますが、設備能力に比較的余裕があります。
バリ取り工程以降はパートさんによる手作業が中心です。

住宅建築は、季節による需要変動があります。
最初に相談を受けた時の社長の悩みは、需要期に毎日深夜までの残業が続くことでした。
特にパートさんによる仕上げ工程がボトルネックとなり、応援人材を入れても生産スピードが思うように上がっていませんでした。

 

生産工程をよく見て問題を発見

社長から、現場の状況と悩みを伺った後、班長さんに工程を案内していただきました。

そして、事務所に戻ると、早速「どうでしょうか?」と聞かれました。

「仕上げ工程の皆さんはあまり仕上げの仕事をしていませんね」
「ええっ、みんな一生懸命に作業しているじゃないですか」
「そうですか、本当に仕上げの作業をしていますか?」

そして、改善チームの皆さんに「ほんとですか?」を何回か繰り返しました。
しばらく、考えていた班長さんが、「そうだ!みんな積み重ねばっかりやってる」と答えてくれました。

「そうです!気づきましたね」

仕上げ工程では、コンベアラインに沿って作業者が並び、一人一人が製品接合部のパテ埋め、中塗り塗装、仕上げ塗装を個別に行いながら、製品を流していきます。

バリ取り後の仕掛品がまとまってどんどん流れてきます。

まずパテ埋め担当者が、積み重なった仕掛品の山から1個取り出してパテ埋め作業をして中塗り工程に流します。

中塗り工程の手前にはすでに仕掛品が滞留していて置く場所がありませんから、どんどん作業後の製品を積み重ねます。
結局、中塗り作業者のところにも積み重なって流れてきますから、中塗り作業者も1個ずつばらして作業して同様に積み重ねて次に送ります。

結局、パテ埋めや塗装作業以外に、必ずばらしと積み重ねの作業を行わなければならないのです。

その時間は、一目見ただけで、パテ埋めや塗装作業の1/3を占めていることが分かりました。

「仕上げラインに仕掛品をどんどん突っ込むから重ねないといけなくなります」
「そして、重ねるから、ばらさないといけなくなります」
「積み重ねが当たり前になっていますよね」

「その結果、大切な仕上げ作業の時間が削られているのです」
「でも、どんどん流さないと遅れるから・・・」

「場所が狭いから・・・」
「そうですか?」
「どんどん流すから、積み重ねて、余計な時間がかかるんですよ」
「まあ、まずは、積み重ねを禁止にしたら、どうなるか確認してみませんか」

ようやく改善チームが問題に気づいてくれました。

さて、次回は「積み重ね禁止の効果」をご紹介します

次回コラム

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事のアドバイザー

阿部 守 先生
(MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 )

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