外注先の協力体制を構築してクレームを減らしたA社の事例(1)【今日から実践!基本からの生産管理・第12回】

前回は、外注管理で大切なことを考えてみました。
今回は、外注先の協力体制を構築してクレームを減らしたA社の事例をご紹介します。

 

A社の概要

A社は外壁建材製造会社です。工場で生産した基材を外注先に出荷し、外注先で塗装と加工を行ってハウスメーカーに納入しています。

ハウスメーカーからA社には、住宅の1棟単位でオーダーがきます。
住宅工事の現場では、外壁を取付けるだけで工事が進むように、住宅の設計に合わせて、加工済の外壁建材をパーツとして納入するのです。

住宅のモデル(種類)によって外壁の柄や色が異なるだけでなく、住宅の大きさや形が個々で異なるため、オーダーの内容は千差万別です。
A社から外注先に出荷する基材は、100種類程度ですが、外注先で加工する最終的な商品の種類は、数万種類と膨大な数になります。

A社は、第9回第10回でもご紹介した企業です。

 

不良の内容

Mさんは、A社の外注管理担当者です。
元々は営業担当者ですが、外注先での不良発生が頻発していたため、外注管理を強化することになり、営業と外注管理を兼務することになりました。

A社の外注先T社で塗装と加工を行った外壁製品は、ハウスメーカーに納入され、パネルに組み立てられた後、1棟分のパーツとして現場に配送されます。

ところが、加工した製品の寸法に誤りがあると、他のパネル部品と寸法が合わずに、ハウスメーカーでパネルを組み立てることができません。
納品した製品に欠けや割れの不良があっても同様にパネルを組み立てることができません。

また、外壁製品には柄が入っていますが、製品の外形寸法が正しくても、切り出した柄の位置がずれていることがあります。
そうすると、パネルの組み立て時には異常に気づきませんが、現場で建物に取り付けた際に、上下左右に隣接するパネルと、柄が合わないことになります。
したがって、大至急生産して現場に配送しなければなりません。
このような不良によってクレームが生じることがありました。

外注先T社では、作業者が作業指示書を見ながら手作業で寸法を入力して切断加工をしています。
建物の屋根近くの外壁には△形のパーツがありますし、窓の横には凸型や凹型の形状になることもあります。
柄の位置も指定がありますから、加工は非常に複雑です。
たまに寸法不良が発生することもやむを得ないという雰囲気もありました。

 

外注管理担当者の悩み

もちろんこのような不良が発生すると、ハウスメーカーの工場からA社に連絡がありますから、すぐに代わりの製品を作って持ち込みます。
そして、このような不良が何回か発生すると、ハウスメーカーの品質管理課からは、異常報告書が送られてきます。
そうすると、原因を究明して対策を行って報告をしなければなりません。

外注管理担当者のMさんは、外注先T社に赴いて社長と現場の管理者に「不良が続いています」「不良を減らしてください」とお願いします。
もちろん、外注先の社長も「もっと注意して作業するようにします」と応えてくれますから、経験の浅いMさんは、言われるまま、異常報告書に「検査を強化します」と書いて提出していました。

ところが、不良の真の原因をつかんでいませんから効果的な対策もできていません。
注意して作業するのも不良発生の直後だけですから、忙しくなるとまた不良が発生します。
とうとう、ハウスメーカーからは「不良の原因は何ですか」「検査は対策ではありません」「原因に対して対策を行ってください」と報告書を突き返されるようになり、Mさんは困ってしまいました。

再び外注先T社に行って相談をしますが、「そう言われても・・・、私たちにはそれ以上できません」としか答えてくれません。

困ったMさんは、現場に入って作業を観察し、「このやり方をこうしたらどうだろうか」「ここをこう変えたらどうだろうか」と考えて提案するようにしましたが、外注先のT社長から「そんなことをやっていたら生産が遅れる」と一蹴されてしまいました。

当時は、注文が右肩上がりに増え続け、残業の連続で生産を続ける外注先T社に頼らなければ、製品を納期に間に合わせることができない状況でもありました。
解決できない問題を抱えたMさんは、会社に行くのも嫌になりかけていました。

しかし、このように悩み続けるMさんに、ようやく大きな転機が訪れます。
次回は、外注先T社との協力体制をどのように構築したかをご紹介します。

次回コラム

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この記事の執筆者

澤田 兼一郎
(株式会社みどり合同経営 代表取締役/中小企業診断士)

立命館大学経済学部経済学科卒業、第二地方銀行を経て当社に入社。中小企業を中心に、経営計画や事業計画の実行性を高める、現場主義のコンサルティングを実施。
特に中小建設業、製造業の経営管理体制の構築、実行力を高めていく組織再構築等のノウハウ等について評価を受ける。

犬飼 あゆみ
(株式会社みどり合同経営 取締役/中小企業診断士)

一橋大学法学部卒業、大手自動車会社のバイヤー(部品調達)として勤務後、当社へ入社。
企業評価における事業DDのスペシャリスト。事業DDでの経営課題の洗い出しをもとに、事業計画や経営計画(利益計画&行動計画)の策定・実行支援が専門分野。

この記事のアドバイザー

阿部 守 先生
(MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 )

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