HOME > コラム > ローカル・ビジネス・サテライト > 5. トヨタは経常利益10兆円をも目指す
04/11/10

5. トヨタは経常利益10兆円をも目指す

トヨタの奥田会長によれば、「経常利益1兆円は通過点であり、さらにトヨタは経常利益10兆円をも目指す」(アーク都市塾講演)とのことである。「サプライチェーン・マネージメント」の手法は、アメリカから入ってきたように思われているが、実は、トヨタの「ジャスト・イン・タイム」の流れをくむものなのだ。

 

●在庫の恐ろしさがわかっていない企業が倒産している。
トヨタはついに世界一の自動車メーカーになろうとしている。トヨタのジャスト・イン・タイムの仕組みがそれを支えている。ジャスト・イン・タイムの仕組みは、在庫をいかに圧縮するかという技法とも言える。在庫の恐ろしさを分かって対処しているから、最高益をあげている。それにひきかえ、倒産企業の殆どが、在庫の恐ろしさがわかっていない。不動産・人材などの「不稼動資産在庫」までをも含めると、倒産の原因はすべて不良在庫であると断言しても良い。

 

●トヨタのすごいところ
在庫の恐ろしさについては、次回ふれることとするが、今回は、「情報共有」がないと、個々の人間がいくら一生懸命仕事をしても、結果として赤字工事や在庫の山を作ってしまうことについて考えてみよう。
トヨタのすごいところは、たくさんあるが、例えば日立や松下の生産システムと比べて個々の機械装置、生産ラインが優れているというよりも、その「つなぎ方」や組み合わせ方に大きな違いがある。

 

● 機械の並べ方
たとえば、製造ラインでの個々の機械の配置を考えてみよう。
通常の製造ラインでは、個々の機械は、製造ライン全体の流れの方向に沿って「横」に置かれている。つまり、機械の材料投入口と、加工工程部分と、加工済み部品の出口があるとすると、加工工程部分が製造ライン全体の流れと同じ方向に「横方向」に置かれている。人が材料を投入し、ひとつの機械の中で加工され、加工済み部品が出てくる。その加工済み部品を次の機械で同じ人が再加工する。
機械の投入口から出口までが長いと、その人が歩いて行って次の機械の操作をしなければならない。歩くためのムダな時間がかかる。
トヨタではこのような場合必ず機械を、「縦方向」に配置する。加工済み部品の出口にコンベアをつけて加工済み部品を加工材料投入口の横までリターンさせるのだ。歩くためのムダな時間がなくなり、すぐに隣の機械での加工ができる。このようにして、一人の人間が同時に数台の機械を担当する。

 

● 「おどりを踊る」ような動きで同時に数台の機械を操作
トヨタの製造現場を見学したことがある。通常の見学コースでは、ベルトコンベアにそって自動車が組み立てられるところで、すべての人が走りながら仕事をしているのを見てすごい現場だと思ったことがある。しかし、機械部品製造工程では、もっと驚いた。一人の人間が「おどりを踊る」ような寸分のムダのない動きで数台の機械を同時に操作している。前述のとおり、機械を「縦方向」に並べた上で、さらに「ニの字型」や「コの字型」に配置することで、一人の人間が体の向きを変えたり反転させたりするだけで、同時に数台の機械を操作できるようにしているのだ。

 

● 「つなぎ」部分が重要
ポイントは機械と機械の「つなぎ」、工程と工程の「つなぎ」、工場と工場の「つなぎ」にあるという。「つなぎ」を軽視ないし無視すると、個々の工程で人間がいくら一生懸命仕事をしても「ムダ時間」や「ムダ在庫」が生じることをトヨタは早くから気付いていた。ここがトヨタのシステムが日立や松下の生産システムと大きく違うところであり、それがトヨタの「ジャスト・イン・タイム」に集約されているのだ。

 

● 「ザ・ゴール」という小説
この「つなぎ」のところを「ボトルネック」と表現しているのが、有名な「ザ・ゴール」という小説である。全米で300万部以上売れたという。「ザ・ゴール」は「TOC理論(注)」 (Theory of Constraints;制約理論または制約条件の理論)に基づいている本で、日本人に読ませるとマネをされてしまうから、長い間、邦訳が認められなかったといういわく付の本だ。
「TOC理論」を発展させたのが「サプライチェーン・マネージメント」である。原材料供給者から消費者にいたる「情報共有」を徹底することで「ボトルネック」をなくし、顧客価値を高めてゆこうとするものだ。これらの理論も実は「つなぎ」を「ボトルネック」や「情報共有」と表現しているだけで、トヨタの「ジャスト・イン・タイム」の流れをくむものであると私は考えている。

 

(注)TOC (Theory of Constraints;制約理論または制約条件の理論)の起源は、1970年末にイスラエル人物理学者 エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した生産管理用ソフトOPT (Optimized Production Technology)に遡る。1984年に、ゴールドラット博士は「The Goal」という工場改善物語を出版し、その中でOPTの背後にある理論を公開した。多数の工場に導入され、その実績からJIT(ジャスト・イン・タイム)を超える生産方式だともいわれている。