
6. 在庫の恐さがわかっていない企業が倒産している。
「損益計算書(P/L)」が在庫の恐ろしさをわからなくさせている。不動産・人材などの「不稼動資産在庫」までをも含めると、倒産の原因はすべて不良在庫であると断言しても良いが「損益計算書(P/L)」では在庫の恐ろしさが掴めないことが問題だ。
●在庫の軽視
トヨタは、在庫の恐ろしさを分かって対処しているから、最高益をあげている。在庫削減とは、顧客ニーズに如何に迅速に対応しているかという指標でもある。
それにひきかえ、倒産企業の多くが、在庫の恐さがわかっていない。在庫削減とは言いつつ、現場を回ってみると、仕掛在庫や材料在庫の管理が出来ている中小企業は本当に少ない。それどころか、倒産企業では不良在庫、陳腐化在庫、さらに架空在庫まで平気で計上している。トヨタとは違った次元ではあるが、在庫を軽視している。在庫の怖さを知らない。
●なぜ在庫が恐ろしいか。「損益計算書(P/L)」に問題がある。
倒産企業に多い在庫は、売れ残り在庫。売れないから、資金化できずに、仕入れ代金や銀行借入金が支払えなくなり倒産することになる。単純な話なのであるが、この怖さが実は本当にわからない仕組みになっている。
「損益計算書(P/L)」により企業経営者は、損が生じているのか益が生じているのかをつかみ、舵取りをしてゆかなければいけない。ところが在庫により、「損益計算書(P/L)」では、儲かっているか損をしているかがわからなくなる面がある。
税務署も、税金をとるために、在庫に関して大損をしている(かもしれない)会社に、大儲けをしていると言うことがある。
中小企業にとっての在庫の怖さはここにある。
●なぜ在庫は、儲かっているか損をしているかを分からなくさせるのか
去年「大ブーム」になって売れに売れたゲームソフトがあるとしよう。そのソフトは今年も売れるか、それとも売れないのか。去年売れたから今年も売れるとも言えるし、去年売れたから今年は売れないとも言える。実際のところはわからないとしよう。この場合、税務署は売れるものとして、在庫は利益とみなして課税する。普通の感覚ならば、税務署が言っていることだから正しいものと考えて、利益が上がってると思ってしまうかもしれない。
なにも税務署ばかりではない。田舎のお年よりの商店主に多いのだが、かって「もの不足」の時代に、仕入れさえすれば必ず売れた経験を持っている方がいらっしゃる。こういう方は、不良在庫をいつか売れるかもしれない「財産」と思い、後生大事にしまっている。そして倒産してゆく。
●「顧客軽視」につながる「在庫軽視」
現行の貸借対照表や損益計算書は、「いつか売れるかもしれない」ものは財産として計上できる。これは、作れば売れたモノ不足の時代の計算の仕組みであり、モノあまりの時代には合っていない面がある。
そのために現在では「キャッシュフロー計算書」の作成が必要とされるようになってはいるが、税務上の計算はあくまで損益計算によっている。納税者の側も、「在庫調整」で、平気で税金を調整しようとする。
これでは「在庫削減」どころの話ではなくなってしまう。もう一度言おう。トヨタにとって在庫削減は、顧客ニーズに如何に迅速に対応しているかという指標なのだ。
「在庫軽視」は「顧客軽視」にもつながる。この落差が経営上の一番の問題点だ。