
16. 複合化が付加価値を生む その7
先週末、金沢の駅前で、早朝とても寒い中、小松空港行きのバス乗り場でバスを待っていると、若い女性から声をかけられた。「よろしくお願いします。」と言って名刺サイズの宿泊優待券をくれた。
●わかりやすいこと
若い女性はホテルの宣伝チラシを配る女の子だったのだが、金沢はホテルの激戦区。全日空ホテル、JALホテル、APAホテルなどがひしめいていてしのぎを削っている。若い女性が早朝からがんばっているなと思ったが、2つのことで感心した。
まず、早朝、空港行きのバスを待っている人の列にポイントを絞っていること。その人たちは、金沢近辺のホテルに宿泊した可能性は高く、確率の高い見込み客である。
第2に、宿泊優待券のわかり易さ。名刺サイズでシンプルだ。材質も名刺と同じ。一度泊まってみようと思う人は、名刺入れにちょっとしまっておくことができて便利だ。知り合いに、「ちょっといい情報だよ」と手渡すこともできる。
●情報はわかりやすいことがポイント
前回、生体外の蓄積情報と生体の情報系の「つなぎ」のことを書いた。いくら情報を蓄積しても、それだけでは何の役にも立たない。生体内の情報に変換されて利用されなければ、何の意味ももたらさない。そのためには「わかり易さ」や「シンプルさ」が重要であると書いた。
名刺サイズの宿泊優待券はとてもわかりやすく、取り扱いがシンプルだ。そして、その宿泊優待券を手渡された人が、よくホテルに宿泊する可能性が高い人であり、その内容を吟味し、理解しやすい人であることも重要だ。情報をわかりやすくするためには、情報の受け手の立場を十分に考慮するということも大切だ。
●「わかりやすさ」を付加することも「複合化」のひとつ。
複合化には、従来の商品に別の機能を複合化するという方法がある。「カメラ付きケータイ」はその代表かもしれない。しかし、今後、従来商品に「わかりやすさ」「シンプルさ」という機能を複合化することの重要性が増すと思う。IT技術を使ってわかりやすく、扱いやすくすることはどんどん行われている。しかし、「名刺サイズの宿泊優待券」のようにアナログな方法も捨てがたい。また、老年用のケータイのように、機能を落としてまでも「わかりやすさ」「シンプルさ」を付加することも「複合化」のひとつだと思う。
●テレビショッピング
テレビショッピングは商品が安いから買っているように見えるが、実際のところ必ずしもそうではない。たとえば最近「パワージューサー」という商品を見た。りんごやにんじんが丸ごとジュースにできる。皮も料理に使えて健康によいという宣伝で、20,000円程度で販売されていた。インターネット通販で同じものを調べてみると、12,000円程度で他の店から販売されていた。
値段の安さのためだけではなく、テレビショッピングで繰り返し機能の解説を見せられる中で、その商品の健康機器としての価値を認識したことで、買ってみようかと言う気持ちが起きたのだ。
そこで、テレビショッピングを単なるプロモーションビデオによる販売としてではなく、「映像によるわかりやすい機能解説」を付加した複合化商品として捉えることもできる。そのように考えるならば、アイデア商品の販売だけではなく、自動車や住宅など、あらゆる商品やサービスの開発・販売に応用できるはずである。
(つづく)