
20. 複合化が付加価値を生む その11
ライブドアの話のつづきであるが、ニッポン放送の新株予約権発行というアラワザで大荒れ模様だ。そもそも、こんなアラワザが通用するなら会社の乗っ取りも、逆に簡単に出来てしまうのではと思われるかもしれないが、そうではない。
●普通の中小企業の場合には禁止されている手法
今回、ニッポン放送が「取締役会」の権限で、「株主総会」に諮ることなく、大量の新株予約権を発行する。それをフジテレビに割り当てるという手法で、ライブドアの持株比率を下げようとしている。こんなことができるならば、取締役による会社の乗っ取りも、逆に簡単に出来てしまうのではと思われるかもしれないが、そうではない。
普通の中小企業は定款で「株式譲渡制限」というものを定めていて、自社の株を売買するには取締役会の承認を必要とするものとしている。そうした閉鎖的会社の場合、特定の株主に対し増資したり新株予約権を発行する場合には株主総会の特別決議が必要となるので、簡単に発行はできない。
しかし今回は、上場会社の間の話であり、「株式譲渡制限」の規定は付されていないためこのような事態になっているのだ。
●上場会社の場合でも微妙
「株式譲渡制限」の規定がないからといって、何でもアリではない。取締役の都合のみの、株主の利益をそこなう新株の発行は認められない。現行商法では、新株発行が取締役会決議により決定される場合、著しく不公正な発行でないこと(商280ノ10)を要求している。今回の新株発行によって「企業価値」が高められるのか否かが争点になるではあろうが、私はニッポン放送・フジテレビの言い分にはかなり無理があると思う。
●M&Aは複合化の手法として効果的
日本でもM&Aはきわめて身近な経営技法になってきた。日経新聞に合併や買収などM&A関連の記事が載らない日のほうが珍しくなった。
M&Aはまさしく組合わせ法である。企業の組合わせにより企業価値を高める重要な経営技法として認知され、かってのような乗っ取りのイメージは薄くなりつつある。ポイントは、新しい組合わせによりシナジー効果を生むことである。もっと言えば、新しい企業価値の創出があることである。
●ライブドアは新しい企業価値の創出をもっとアピールすべき
今回のニッポン放送の問題では、ライブドアによる企業乗っ取りのイメージが先行してしまった。放送・通信業界は、「規制産業」「利権産業」であり、ナワバリ確保が重要な業界である。その意味でニッポン放送・フジテレビ側が、新株予約権というアラワザを使ってくることもうなずける。しかし、ライブドアも、「ネットとメディアの融合」とか「双方向」という抽象的な表現ではなく、それによって人々の生活をどのように豊かにしてゆくのかという、新しい企業価値の創出をアピールすることで対抗してゆくべきだと私は考える。