HOME > コラム > ローカル・ビジネス・サテライト > 21. 複合化が付加価値を生む その12
05/03/09

21. 複合化が付加価値を生む その12

高知工科大学の学長の任命をめぐるお家騒動も橋本県知事が折れる形でほぼ決着が付いたようだ。その高知工科大学総合研究所長であり、元松下電器産業株式会社副社長でもある水野博之教授もまた、「今あるものの組み合わせ」の重要性を強調される。これは松下幸之助の手法でもあるらしい。

 

●「今あるものの組み合わせによって、新しい便益を得る」
水野教授によれば、松下幸之助の有名な二又ソケットと言い、砲弾ランプと言い、すべて「今あるものの組み合わせによって、新しい便益を得た商品」であったそうだ。革新的な技術の発明でもなければ、発見でもない。しかしそれらは、「新しい便益」=「新しい顧客価値」を人々に提供することができる。

 

●二又ソケットなら、なんとなく手が届きそう
水野教授は、イノベーションが日本では「技術革新」と訳されたことは、不幸なことだと断じる。「技術革新」というと、多大な研究開発費や投資が必要で、中小零細企業には手が届きにくいイメージがあったりする。しかし松下幸之助氏の二又ソケットなら、なんとなく手が届きそうではないか。
前にも書いたが、シュムペーターはイノベーションが、今あるものの新しい結合により生じると喝破している。大事なことは技術の新奇性ではない。生み出す新しい便益であり新しい顧客価値である。それによって人々の暮らしがよくなり、世の中が活性化することである。

 

●新しく発明された技術を何と組み合わせるか
新しい便益や新しい顧客価値は、実は新しい技術の発明そのものにより生まれるのではない。新しい技術と「今あるものとの新しい組み合わせ」=複合化により初めて生まれる。
他の人の発明した新しい技術を、何と組み合わせるかを常に考えている企業のほうが、新しい技術を発明した企業そのものよりも事業的には成功した例はいくらでもある。
例えばミシンを発明したのはエライアス・ハウという人だが、事業で成功したのはシンガーである。また、サミュエル・モース(日本ではモールスとよばれているが、英語ではモースと発音する)は、近代電信技術の父と信じられているが、彼はもともとはアメリカの画家であった。彼は、技術のほとんどは他の人の発明を組み合わせただけで、彼がやった最も重要なことは、電信技術により、それまで広大なアメリカ大陸の中で互いに離れ離れであったアメリカ人を一つに結びつけるという概念=価値観を提唱したことであり、それによって事業的にも大成功した。

 

●新しいインフラを、何と組み合わせるか
新しく発明された技術を組み合わせると言えば仰々しい。しかし、インターネット、携帯電話、光ファイバーによる通信などのインフラそのものが常に急速に利便性を高めている。中小企業では、これら高まった利便性をいかに自己の事業と組み合わせ、新しい顧客価値を創ってゆくかということが比較的取り組みやすい面がある。(次回につづく)

(参考文献)
「今こそ松下幸之助に学ぶ」水野博之著 日刊工業新聞社
「イノベーションの経営学」後藤晃 鈴木潤 監訳 NTT出版