
37. 経営者のコミュニケーション能力」 その1
成功している経営者を見ていると、他人に教えを乞うことが上手である。コミュニケーション能力に優れているとも言える。しかし誰にでもできるコミュニケーションの基本があるという。
●受け入れ姿勢
水を飲みたくない馬に水を飲ませるのは難しいように、話を聞きたくない相手に話を聞いてもらうことは難しい。話を聞きたくなるような状況を作るにはどうすればよいのか。
その基本が「ラポール」作りであるという。ラポールは、フランス語で、「関係」「関連」「架け橋」「類似点」という意味である。しかし、心理学や催眠の用語では、「信頼関係」「共感関係」という意味で使用される。
●ラポールが受け入れ姿勢を作る
「ラポール」はお互いに影響しあうことが可能な状態を意味し、話を聞く側の受け入れ姿勢を作るものだ。
話をしていて、互いに同郷、同族、同窓、などであることがわかった途端に打ち解けて話がスムーズに行くということはよくあることだ。また、いきなり会うのではなく、相手の親しい人を介して会ってもらうというのも「ラポール」づくりの一手法である。
しかし、いつもそううまく互いの共通点が見つかるとは限らない。その時にはどうすればよいか。
●お百度を踏むと「ラポール」ができる
昔から、役所に対する営業の基本に「お百度参り」というのがある。始めは営業に行っても相手にしてくれない。何度も何度も足を運んで、名刺を置いて来る。その名刺が溜まって、かなりの厚みが出来た頃役所の担当者は「そろそろ会ってやろうか」ということになる。
ソフトバンクの孫社長は、高校生の時に、当時東京の日本マクドナルドの社長、藤田田氏にあいに行った。「アメリカに行きなさい」との助言を得て即、実行。高校を中退して、16歳で単身アメリカに留学した。
田舎からアポイントなしで、ポッと出てきた少年に会ってくれた藤田田社長もすごいが、孫少年も藤田社長に会ってもらうために、断られ続けても7日間、通いつめたのだ。
これらの話は、お百度を踏むと「ラポール」ができるということを意味している。
●なぜ、お百度を踏むと「ラポール」ができるのか
人間は、他の動物と違って、複雑で巨大な社会・組織・集団を形成することが出来ている。それは、人間の意識形成が、他の動物とくらべて非常に発達していることを意味する。
ある実験データによれば、意識していることを自分で認識できる動物は人間しかいないそうだ。
その結果、人間は他の動物には見られない問題を抱えることになる。端的に言えば、「自分の意識は正常か」を自分で常にチェックしていなければならなくなる。この欲求は想像以上に強いものであるそうだ。
この正常確認の方法として、自己と他者とを常に比較していたいという欲求が生じる。自分の経験や知覚を他人と共有し、比較することで自分の正常を確かめるのである。この欲求は、共有体験、共有認識を持ちたいという強い欲求となる。
したがって、「お百度を踏む」という行為は、共有体験を作ることとなり、相手との「ラポール」を形成する強力な手段となるのだ。これは誰にでも使えるし、様々なケースで使え、想像以上に大きな効果がある。壊れた人間関係の修復にも使える。ただし、「ストーカー」にならないように注意しなければいけない。
「ラポール」は、NLP(神経言語プログラミング)という心理学手法で深く研究されている。(つづく)