
46. 新シリーズ・中小企業のための新会社法の実務 その4 一人取締役会社の代表取締役
Q:私は、新会社法により会社の定款を変更して、取締役を一人の会社にしようと思っています。しかし取締役が一人では「代表取締役」を名乗ることは出来ないと聞きいています。私は社長ですので「取締役」の肩書きでは商売上、恰好がつきません。「代表取締役」を名乗りたいのですが、新会社法ではどうなのでしょうか。
A:代表取締役の登記は出来ませんが、代表取締役を名乗ることは差し支えないと考えます。
●取締役一人の会社の社長は
前々回書いたように、新会社法では取締役一人の株式会社を設立できるようになりました。有限会社の規定を株式会社に取り入れたものです。有限会社の場合でも、取締役一人の会社で「代表取締役」を名乗れるのかという実務的な問題がありました。会社の社長が単なる「取締役」では格好がつきませんし、実際に会社を代表するわけですから、「代表取締役」を名乗ってもよいのではないかとの考えもありましたが、代表取締役の登記は出来ないとされていました。
●有限会社法と新会社法では規定が異なる
有限会社法では、登記上、取締役のうちに、会社を代表しないものがあるときに、会社を代表すべきものの氏名を登記することと明確に定められていました(注1)。
しかし、新会社法では少し違っています。単純に、代表取締役の氏名及び住所を登記しなければならないとされているのみです(注2)。
また、株主名簿や株券には代表取締役が署名し、又は記名押印しなければならないと明確に規定されています。「代表取締役」がいないと署名に困ります。
●実務的に差し障りはない
登記実務上は新会社法でも、取締役一人の会社で「代表取締役」の登記は出来ないでしょう。しかし、その場合でも、取締役が会社を代表していることには間違いはありません。
新会社法 第三百四十九条には「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。」と定められています。会社を代表するという意味での「代表取締役」の肩書きを名詞に書いたからといって、内容が誤っているわけでもありません。第三者に誤解を与えたり、損害を与えたりする恐れもありません。
前々回に書いたように、一人株主の会社が認められなかったのは、一人では「社団」とは言えないということにあったのですが、株主は増資や株式譲渡によって増えるかもしれないという「潜在的社団性」の理論から一人株主の会社が認められるようになりました。同じことは「代表取締役」にも言えます。
したがって、私見ではありますが、取締役一人の会社で「代表取締役」の肩書きを名乗ることは差し支えないと考えます。
将来的には「代表取締役」の登記も認められるべきであると思います。
(注1)
有限会社法 第十三条2項4号5号
2 前項ノ登記ニ在リテハ左ノ事項ヲ登記スルコトヲ要ス
四 取締役ノ氏名及住所
五 取締役ニシテ会社ヲ代表セザル者アルトキハ会社ヲ代表スベキ者ノ氏名
(注2)
(株式会社の設立の登記)
第九百十一条3項13号および14号
3 第一項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
十三 取締役の氏名
十四 代表取締役の氏名及び住所(第二十二号に規定する場合を除く。)