コラム 工事原価管理と支払業務、経理業務のムダ(14) 最終回を追加しました。

専門工事業D社では、実行予算管理から支払業務までを建設業特有の工事原価管理に対応した専用のソフトウェア(以下ソフトウェア)の導入を行い効率化することにしました。前回はソフトウェアの運用にあたり、マスタ登録について社内で検討したお話をしました。今回は、いよいよ本格的な運用のお話です。

 

【15.本稼働開始】

 

いよいよ工務部全体でソフトウェアの運用が始まります。当初1カ月は試運転ということで、今までの処理も並行して行っていきます。このため、今回のプロジェクトで一番皆様の仕事量が多くなります。「使いづらい、時間が無い、今までのやり方の方がよい」など不満が出るのもこの時期が多く、ソフトウェアの導入で一番大変な時期でもあります。

工務部員に集まってもらい、運用開始についての説明が行われています。

 

工務部長:「今月から工事原価管理ソフトウェアの運用を開始する。

       これまで本田君、柏木君、総務の担当者が尽力し準備を進めてきたことは皆知っていると思う。

       また、工務部員の皆もパソコン操作等に慣れるように努力をしてくれたと思う。

       今回のソフトウェア導入は、単なる業務効率アップのためのIT化ではなく、これまで担当者により

       バラバラだった工務部の実行予算管理を統一し、情報共有を行うことで、下請けや業者への

       発注単価についても見直しを行っていき、コストダウンを図っていきたいと考えています。

       この取り組みにより、当社の価格競争力をアップすることにもつながる、非常に重要な取り組みと

       肝に銘じてもらいたい。」

 

本田君:「それでは、具体的な運用についてご説明します・・・。」

 

本田君は、少々工務部長の迫力に驚きながらも、工務部の皆様にお願いしたいこととして

 

(1)実行予算は必ず登録すること。

 

(2)下請けや業者への発注時には必ず、ソフトウェアに入力すること。
   発注書も出来るだけソフトウェアの既定の物を使うこと。

 

(3)業者への支払い確定(出来高査定)等を毎月の期日までに入力すること。

をお願いしました。

 

(1)の実行予算の登録については、予めマスタ登録をきちんと行っていたことと、工事種別により予めひな形を作成し、それを使って簡単に登録できるように工夫していた為、順調に対応することができました。

(2)(3)については、遅れる担当者もいましたが、総務の中村さんのフォローで何とか全員が入力することができました。

今月から、着工する現場のみを運用の対象にしたことも、スムーズに対応出来た要因だったと思います。こうして徐々にソフトウェアで管理できる現場も増え3カ月後には、ほぼ全現場を管理することに成功しました。

 

遠藤さん(総務部支払い担当):「始めはどうなることかと心配していましたが、今では、業者への支払日

      7日前には、支払金額が正確に把握できるようになり、助かるわ。」

 

総務部長:「しかも、注文書が入力されているから、来月以降どのぐらいの支払いが発生するかも

      すぐに把握することができ、資金繰りも余裕をもって対応できるようになった。」

 

工務部長:「実行予算と進捗状況(発注状況)が毎月確認出来るようになり、本来の実行予算管理が

      できるようになった。今後は、発注単価の分析によりコストダウンを図っていく事を取り組みたい。」

 

私:   「当初、総務部長様よりご相談頂いた問題点はこれで解決できたと思います。今後は、工務部長が

     工務部員へお話になったように、蓄積された実行予算管理のデータを活用し、コストダウンに役立てて

     行くことが重要だと思います。」

 

プロジェクトメンバー一同を次の目標を確認し合ったところで、このお話を終わりたいと思います。

 

これまで長期間に渡り、お付き合い頂きましてありがとうございました。

来月からは新しい連載を予定しておりますので、引き続きお付き合いをよろしくお願いいたします。

 

みどり合同経営 コンサルティング部門
コンサルタント 山下晶子
執筆者ご紹介 → http://ct.mgrp.jp/staff/yamashita/